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香港でのキャッシュレス化を推進する交通乗車券/決済サービス「オクトパス」の取り組みは?

2018年8月30日9:00

日本キャッシュレス化協会が「夏の特別セミナー」を開催

一般社団法人日本キャッシュレス化協会は、2018年8月23日、同協会主催の第3回定例セミナーとして「夏の特別セミナー」を開催した。同セミナーでは、香港の八達通(オクトパス)のセールス&マーケティング部長 Rita Li(リタ・リー)氏が登壇。オクトパスは、約740万人いる香港市民の約99.9%が持っている交通乗車券、電子マネー支払いなどが可能なサービスである。公共交通機関の乗車カードとして世界で初めて非接触型ICカード規格「FeliCa(フェリカ)」を採用し、現在はNFCやQRコードといったモバイル分野にも取り組んでいる。

中央が八達通(オクトパス)のセールス&マーケティング部長 Rita Li(リタ・リー)氏、左が博報堂生活総合研究所上席研究員の三矢 正弘氏、右が日本キャッシュレス化協会の専務理事の高木 純氏

香港で15歳以上~64歳までのオクトパスの普及率はほぼ100%
交通から日々の決済までさまざまなシーンで利用可能

香港のオクトパスは日常生活に必要なカード・モバイルサービスとなっており、15歳以上~64歳までの人々の普及率はほぼ100%でクレジットカードの80%を超えたという。現在、香港市場では、350万以上のオクトパスカードが流通。オクトパスカードとO! ePayの口座は、2017年第2四半期の4,350万から2018年第一四半期には4,900万に増えたそうだ。

現在香港のキャッシュレス決済方法では、VisaやMastercardといったクレジットカードや銀聯、Alipay(アリペイ)やWeChat Pay(ウィーチャットペイ)といったQRコード、Google Pay、Samsung Pay、Apple PayといったOEMのNFC決済などがあり、競争は激しい状況だ。2017年の香港金融管理局の情報によると、電子決済比率は個人消費の60%を占める。リー氏は、「現金を減らすために、新しい技術、価値観、ユーザー体験が重要です」と説明する。

講演する Rita Li氏

中でも、モバイル決済は発展途上であり、使用者は主に25~34歳のサラリーマンだという。また、PtoPの個人間送金の普及率も徐々に上昇しており、25~34歳は高い所有率と成長率を示している。

オクトパスのキャッシュレス化への貢献として、香港では、家を出てから帰宅するまで、交通、小売、飲食、レジャー施設、キオスク、入退施設など、さまざまなシーンで利用されている。香港におけるオクトパスの一日当たり1,400万件以上。特に小売での決済は急速に進んでおり、交通での金額を上回っている。非接触交通ICカードで半分以上が小売りでの利用というのは、世界的にみても珍しいそうだ。

モバイル決済サービス「Smart Octopus in Samsung Pay」を提供
QRコードを使用した決済アプリも提供

スマホを活用した取り組みも強化。2012年に取引記録をチェックできるアプリを開発。大手の通信会社と連携して、オクトパスカードを格納できるSIMカードを開発して、交通機関でタッチして支払いが可能だ。香港では、カードとモバイルを両方使っている人がいるため、どちらでも利用できる環境を整えている。すでにオクトパスアプリのダウンロードは150万を突破している。また、モバイル決済のユーザー体験をシームレスにするために、サムソンと提携して、セキュアエレメントを利用したモバイル決済サービス「Smart Octopus in Samsung Pay」を提供している。

さらに、PayPal(ペイパル)とのパートナーシップにより、オクトパスの「O!ePay」アプリを使って、ペイパルアカウントに送金が可能だ。これにより、クレジットカード等をほゆうしていなくても、150万のECサイトから買い物ができる。

オクトパス社では、個人に加え、企業向けのサービスも強化しており、2017年末にはスタートアップなどモバイル決済を導入できるようにQRコードを使用した決済アプリを発表した。また、商品やサービスの詳しい情報を紹介できるセルフサービスキオスクでの決済も提供している。

交通分野の付加サービスとしては、地下鉄とミニバスの乗り換え割引、ターミナルで利用する決済システム、月間パスを販売するセルフキオスク、船のゲートで便利に搭乗できるといったサービスを提供している。

なお、香港におけるキャッシュレス決済とスマートバンキングをさらに推進するため、香港金融管理局は2018年9月にモバイルやネット経由で異なる銀行口座、電子マネーアカウントに送金できる取り組みを進める。さらに、中小企業に向けた、共同QRコード基準も検討しているそうだ。

さらに、香港で地下鉄やレストランを運営するMTR社は、駅の改札機においてQRコードで入場できるようにする提案を入札中だ。

オクトパス社では、将来的にモバイル財布は支払いの主流になると考えている。今後は、生体認証により登録のプロセスを簡易にして、簡単に支払えるように期待している。結論として、革新とお客様のニーズを理解することを通して、キャッシュレス化を実現していきたいとした。

今回のセミナーを主催した日本キャッシュレス化協会では、日本国内で外国人向けのサービスや販売を行う事業者や店舗に向け、「外国人のお客様にスムーズな決済ができるというおもてなし」ができる海外決済ブランドの導入を推進する取り組み「キャッシュレスニッポンおもてなし実証実験」を行う予定で、すでにオクトパスも誘致しているそうだ。

会の冒頭では、日本キャッシュレス化協会の専務理事の高木 純氏が挨拶。東京が10%キャッシュレス化した場合、年間4兆円のコストが下がるとした。また、QRコード決済ではさまざまなプレイヤーが登場し「Pay戦争」が登場しているが、普及に向けては動的QRコードがなければ共存はありえないとした。

開会挨拶する高木 純氏

今回のセミナーではゲストとして、博報堂生活総合研究所上席研究員の三矢 正弘氏も登壇。これからのお金の進化のカギとなるベクトルとして、①お金の複線化(お金の定義の多様化)、②お金の小圏化(個人間でお金が流通する経済圏の誕生)、③お金の実名化(人と紐づいたお金の流通の活発化)を挙げた。

講演する三矢 正弘氏

日本キャッシュレス化協会では、今後も定期的にキャッシュレス化に関するセミナーや勉強会を開催し、日本のキャッシュレス化促進に貢献していきたいとしている。なお、次回セミナーは2018年10月18日を予定している。