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日本郵船、船員給与の支払いに再現金化が可能な独自の電子通貨を導入

2019年3月25日8:00

船員の送金の利便性向上とともに船上の現金管理コスト軽減を図る

日本郵船は中期経営計画に掲げる“ デジタライゼーション” の一環として、これまで現金で行っていた船上での船員給与の支払いに、再現金化が可能な独自の電子通貨を導入する。これにより外国籍の船員が船上から母国に送金できるようになるなど利便性が高まり、現金管理リスクの軽減も図れる。2018 年8 ~ 9 月に実証実験を終えており、2019 年度中のサービス開始を目指す。

“デジタライゼーション”の中心的施策に
船上のキャッシュレス化推進

日本郵船は、船上での船員給与の支払いに、独自の電子通貨を導入することを決めた。2018年4月に発表した同社の中期経営計画“Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green”における“デジタライゼーション”の中心的施策の1つとして実施する。

日本郵船 イノベーション推進グループ イノベーション推進チーム 吉岡良介氏、秘書グループ 社長秘書 藤岡敏晃氏、広報グループ 報道チーム 清水美穂氏

現在、日本の海運会社保有の商船に乗船している船員はほとんどが外国籍であり、そのうち7割以上がフィリピン人。船上での船員給与の支払いや日用品の購買などは、米ドル建ての現金で行われている。そのため1隻当たり4万~5万ドルの現金が積載されており、船長がこれを管理している。電子通貨の導入目的は、船上のキャッシュレス化を進めることにより、船員の利便性を高めるとともに、船長の業務を軽減することだ。

この電子通貨は、世界各国の金融機関で再現金化できるのが大きな特徴。再現金化についてはすでに、特定のグローバルバンクと連携を進めている。

外国籍の船員の多くは、船上で受け取った給与を母国の家族などに送金するが、現状では港に上陸した際に金融機関に出向いて手続きを行わなければならない上に、高い送金手数料を支払う必要がある。日本郵船 イノベーション推進グループ イノベーション推進チーム 吉岡良介氏は、「電子通貨導入後は、スマホアプリを用いて、船上からでも、今より安価な手数料で簡単に送金手続きをとることが可能になります」と説明する。

船上での給与支払い、および、売店での物品販売が電子通貨に置き換わることで、船長の給与受け渡し、および現金管理の業務負担を減らすことができ、同社にとってもメリットが大きい。船に積載する現金は、段階的に相当程度圧縮できると同社は見ている。

船上で専用アプリケーションを利用した送金テストを実施する様子

実証実験では支障なく運用
2019年度の運用開始に向けて準備を加速

同社では、決済ネットワーク事業者の協力を得て、2018年8月から9月にかけて複数回、電子通貨の実証実験を行った。

海上で利用している衛星通信には、遅い、時々電波が途切れるといった不安定要因がある。実証実験では、給与データ、購買データという重要なデータをやり取りする上で、通信が不安定な環境でも電子通貨管理アプリケーションを運用できるかということに特に重点を置いて、検証を行った。結果、電波が途切れることがあってもその問題をクリアできる技術を用いて支障なく運用できることが確認できた。

現在、この実証実験で浮かんだ課題の解決、改善を進めている最中で、2019年度のできるだけ早い時期に、自社管理船約200隻を対象に本格運用を開始する予定だ。

電子通貨は船上のみならず、陸上での決済にも使えるものとする。現在、フィリピンの協力会社を通じて、加盟店開拓を進めているところだ。

日本郵船が実現・提供する価値

世界中の海運会社での導入も視野に
銀行口座を保有しない船員の利便性向上へ

電子通貨導入のプロジェクトリーダーである日本郵船 秘書グループ 社長秘書 藤岡敏晃氏は、「世界中の船の上で、今はまだ現金決済が主流ですが、これがキャッシュレスに向かっていくことは間違いありません。全世界の船上に積載されている現金の総額は800億円と推定されますが、そのうち日本郵船の運航船で約10億円。将来的には、われわれの電子通貨が世界中の海運会社に導入されることを目指しています」と意気込む。

そもそも船上のキャッシュレス化が進んでこなかった要因は、クレジットカードはもちろんのこと、銀行口座も持っていない外国籍の船員が少なくないことにある。船員は、数カ月間乗船すると、次の乗船まで数カ月、間があくという就労形態のため、期間工と見なされ、十分な収入があるにもかかわらず信用が得にくい場合が多いのだ。藤岡氏は、将来を見据えて、「われわれの電子通貨のプラットフォームを活用して、正当なスコアリングを行い、彼らが、享受すべき金融サービスをきちんと享受できるようにしていきたいと考えています」と力強く語った。